誰かを思うことで


一度講座を申し込んだ生徒が、その翌日の今日になって申込みを取り消しに来た。


あまりに急なことだったので取り消しの理由を聞いてみたけれども、教えてはくれない。
ただ、隠すわけではなさそうだし、どちらかというと話したそうな感じだったので、授業が終わるのを待ってから話を聞くことになった。


個人情報に関わることだから、あまり詳しくは書けないけど、その生徒の友人に重大なアクシデントが生じたとのこと。
その友人のことを気遣うあまり、精神的にも物理的にも勉強に向かう余裕が無いので、とりあえず申し込んだ講座はキャンセルしたいとのことだった。


こんな簡単にあっさり書いているけど、啜り泣きながら話していたし、痛々しくてとても目を向けられるものではなかった。


その生徒は高校3年生。
今の時期の高校3年生といえば、受験本番に向けて追い込みをしなければいけない時期だ。
そんな時にアクシデントに巻き込まれてしまうのはかわいそう、それは確かに思うんだけれど、もっとそれ以上に思ったことがある。


それは、「自分を犠牲にするほど誰かのことを想ったことがあるのか」ということ。
まったく無いわけではないけれど、受験という人生の中でもかなり重要なイベントほど大きなものを犠牲にしてまで誰かのことを想ったことは無いだろう。



その生徒には、アクシデントの解決までは勉強は置いておいてそちらに専念するように伝えた。
自分達が踏み込める限界を感じつつ、見守ってやりたい。